トランプ関税 スマホ対象外から見えること3選

アメリカ経済

4月14日、トランプ大統領が関税対象からスマホを対象外としました。

トランプ関税は「自由貿易の復活」を目指している

自由貿易が善

20世紀末以降、世界は自由貿易を「善」と見なしてきました。効率の最大化と資源の最適配分を可能にするという点で、理論的には納得できるものです。

中国による自由貿易の破壊

中国は2001年にWTOへ加盟し、それ以降、労働力の安さや規制の緩さを武器に、世界の工場となりました。一方、アメリカでは製造業の空洞化が進み、とくに白人中産階級の没落という社会的ダメージが現実のものとなりました。

改革保守の考え根本「自由貿易をとり戻せ」

今回の関税政策を思想面で支えているとされる人物に、エコノミストのオレン・キャス氏がいます。キャス氏はバンス副大統領に近しい思想家として知られています。

キャス氏をはじめとする改革保守の論点は、自由貿易の限界と、国家による産業の保護を必要とする現代的事情にあります。彼らの主張の出発点はこうです──「自由貿易は、アメリカに本当に幸福をもたらしたのか?」。

改革保守の視点では、この自由貿易が「自由」ではなかったとされます。通貨操作、労働基準の格差、輸出補助金やVAT(付加価値税)など、見かけ上の“自由市場”の裏には、国家ごとの制度の非対称性が隠れています。キャス氏は、この構造は“フェアな競争”とは言い難い、と言っています。

中国の経済モデルは自由主義ではない

中国の経済モデルは「国家資本主義」とも呼ばれ、市場による競争というよりも、国が舵を取る長期的戦略のもとに展開されています。対してアメリカの企業は株主への短期的利益を求められ、戦い方そのものがそもそも違うのです。自由貿易という“同じ土俵”の上で闘っているように見えて、実は試合のルールが異なる──その矛盾が、今日の強硬な政策へとつながっているのです。

改革保守はこう考えます。「公平が保証されないならば、国家が介入し、国民の暮らしを守るのは当然である」と。一見して非合理にも見える関税引き上げの政策には、自由貿易という“大きな物語”への反省と、国家としての再起をかけた戦略的思想があるのです。「自由」という言葉の意味を、もう一度国として定義し直そうとする試みていると、肯定的に見ることができます。

スマホ・PCを関税対象外とすることから見えること3選

国外への影響力とアメリカ国内のバランス取り

トランプ氏は、関税措置により国外への影響力を得ようとしています。特に「対中国」です。しかし、スマホ等の電子機器は今や中国からの逆輸入的にアメリカ国内に入っています。結局、損をこうむるのはアメリカ人という構図ができてしまいます。これでは支持層が離れてしまう可能性があります。

結局トランプ氏は、国外への影響力とアメリカ国内の利益のバランスを取る必要があり、それをやっているように見えます。顔色を伺っているとも言えます。

株価を操作する力

トランプ氏の関税発効宣言により世界の株価はおよそ10%程度低下し、関税停止措置発言により再度上昇するという動きを見せています。トランプ氏の発言一つでマーケットをコントロールすることができているとも言える状況です。

トランプ氏の行動ははったりも多いですが、今回の関税一連の流れでは自分の力を見せつけているようにも見えます。

トライ&エラーで関税の解を探す

先に説明した「自由貿易の復活」のためには何をすればよいのか、一つの解は関税をかけて中国を抑えることという考えがあるようです。しかし、関税をどの程度かけるのがベストなのか分かっていないのでは?思えます。そして一方で、アメリカ国内の損と反発は防ぐ必要があります。

推測ですが、トランプ氏の頭の中は、「どうしたらよいか考える前にまずは行動だ」、「多めに言ってどうなるか見てみよう」、「ダメそうなら緩和も全然あり」、こんな感じでトライ&エラーを繰り返しているのではないかと思えます。

トランプ氏の行動に一喜一憂は止めよう

話題がつきないトランプ関税ですが、あまりの緩急にニュースを追うのが疲れてきました(笑)。少し離れた視点で見て、「トランプさんがまたおもしろいことやってるわー」くらいで見るようにしたいものです。

コメント